落ち穂拾いブログ

記事よりもコメント欄にコンフィデンシャル情報満載!の中国ネタブログ。

ほ、翻訳者のせいじゃないんだからね!中国法令文書問題

2009/03/23 Mon [Edit]

おしさしびりに、こうしーん!翻訳ネタなので、ちょっと専門的かも。

私の会社内での主な仕事(というか採用名目)は「翻訳」ですので、こちらのスキルはなんとか維持しようと日々努力を重ねておりますが、努力だけではどうにもならないということがあるという話。

中国語文章(特に通達)を読んでいて「お??」と思うこと数知れず。例として

・用語を統一していない(言い回しを換えているにはそれなりに意味があるのか?
・法令にもかかわらず誤字を修正していない(これは新語か?)
・文章の係り結びが不明確で解釈が複数になる(これは私のせいか。)


などが掲げられます。

こういった問題もあり、翻訳には苦労しておりました。(そのほか、解釈も「原文レベル」で紛糾すること数知れず)

そんななか、翻訳がだめだめになるのは私のせいだけじゃなかった、というニュース。
言語学の専門家の厳しいチェック。《食品安全法(草案)》から122カ所の「病巣」発見」によりますと、表題の「食品安全法」以外にも様々な法令で言語学上の問題が指摘され修正されているとのことです。以下、法学言語学専門家の宋北平氏のはなし。

その1.

 「証拠と訴状を提出すること(应递交证据诉状)」

通常「と(和)」でむすばれるものには順序性があり、「AとB」とあるならば、Aが先、Bがあとという意味合いも帯びてきます。起訴もせず裁判も始まってないのに証拠は出さないですよね。
ですので、ただしくは「訴状と証拠を提出すること(应递交诉状和证据)」とすべきとのこと。

その2.

 「食品を貯蔵、輸送及び積み卸しする容器・道具・設備と条件は安全、無害であること」

「容器・道具・設備」までは「安全、無害」に掛かるのは問題ないが「条件」が「安全、無害」に掛かるのは文章的に変。なので「食品を貯蔵、輸送及び積み卸しする容器・道具・設備は安全、無害であること」とすべき。

その3.

 「新たな食品添加物を利用・・・安全性評価申請を行っていない(利用新的食品添加剤…,未申请进行安全性评估)」

これは正しい文章「新たな食品添加物を利用・・・安全性評価申請に合格(经过)していない」と対照するとわかりやすいかと思いますが、安全性評価は申請さえすればいいってものではなくて、それに合格していなければいけないものです。よって書き換え提言。

その4.

 「既に販売されている食品の回収は、回収状況を記録するとともに関連生産経営者と消費者に通知する」

これも語順に問題あり。回収状況をたらたら記録するのを優先していたら、被害が拡大してしまいます。よって、「既に販売されている食品の回収は、関連生産経営者と消費者に通知するとともに回収状況を記録する」とするのが正しいです。

そのほか、「物権法(草案)」の中で田舎の住民を指す用語として「村民」「農民」「集団人員」という言葉が使われていたのですが、これらの使い分けに意味があるのかなんなのかという事も指摘し修正したとのこと。

そんなこんなで、「食品安全法」では122カ所、現在審議中の「防震減災法」では44カ所の誤りが指摘されました。

何度も審議を重ねる法令レベルでもこれだけたくさん指摘・修正されていますが、しょっちゅう出される「通達」レベルでは、発信する側もいちいち前後左右(その文章内・同じ官庁でのその他の文書)の整合性を考えている余裕なぞほぼないと言ってもいいかもしれません。お上の作る文章はそれなりにひどいということがこれである程度かいま見えたかと思います。

だからといって、原文がひどいからという理由で誤訳は許される訳もなく、上司Gにチェックをいれられないよう日々これ鍛錬を続ける崖っぷち女でした。今日もがんばろーっと。
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Comments

中華共産帝国法令文章に関する仮説

日本においては、法令の文章が(わかりにくいけど)間違っている、意味不明(法律を勉強した人にとって)ということはありません。
中華帝国においても、神武紀元9世紀の魏の文帝(曹丕)が「典論」の中で「其れ文章は経国の大業にして不朽の盛事なり」と論じておりますから、決して文章を軽んじているとは思えません。
更に時代を遡れば、秦(チャイナ、支那の語源はこれ)の始皇帝
の生物学上の父であると言われる豪商呂不偉が編纂させた「呂氏春秋」はその文章に絶対の自信があり、一文字でも加除訂正を指摘できた者には千金を払うと豪語したとか・・・
で、そういう国で何故に斯くもひどい文章が法令・通達足りえるのかについての勝手な仮説を2つ

仮説1 吏員能力不足説
単に文章起草者の学力が不足している。可能性としては、法令の起草なんか単なる雑務(だって役人としてのウマミは実際の運用のほうにあるもんね)なので、無能な下級職員に振られており、上の人はまともにチェックもしない。あるいは、下級吏員の仕事ではないとしても起草している吏員が文革下放世代で碌に国語(この場合中国語)の勉強もしていない。

仮説2 陰謀説
いやいや、斉の管仲以来2600年余、秦の商鞅の変法以来2300年以上の法家の歴史がある中国だけに無知やミスでそんな間違いはせんやろうという穿った見方をすると、
実際の運用現場で好き勝手に解釈適用して、あわよくばおいしい思いをするためには、法令の文章は複雑怪奇で誤りが多いほど都合が良く、前漢(中国では西漢)の高祖が咸陽に入ったときやったみたいに法三章耳では困るんだよね。
ということで、
わざと欠陥だらけ、そのまま読んだら意味不明に作った文芸作品としての法令が出来上がったのではという説





コメントありがとうございます

弊社律師は、仮説2.陰謀説を唱えておりました。やっぱりそうなのか〜〜??

 
 
 
 
 
 
 
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上海在住○年目となりました。会社では調べものしたり、文章を書いたり、翻訳したりしています。
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